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勇気

空港への道を間違えて
空港の端の、飛行機が飛ぶ立つ方向に行ったとき、
いつもとは違う眺めに惹かれ車から下りて見た。
飛行機が近づいてきてふわっと地上を離れ
爆音と共に私の頭上を飛び立っていく。
次次と繰り返される
心まで飛ぶような 眺め。

空港に行ったのはいつだったかな。
数年前のようにも思えるし、数ヶ月前のようにも思える。
わかっているのは、
息子が亡くなった後だということ。
眺めながら、
息子がこの景色を見たら、歓声を上げたことだろうと
心で呟いたことを 思い出す。

感動する景色 美しい音楽
心が踊る出来事
素晴らしい出来事に遭遇した時には必ず 
息子にも経験させてやりたかったと思い
胸が痛くなる。

加害者はそんなこと
考えることもなかったろうね。
それより彼は
素晴らしく 感動するようなものに
あまり出会えていない人のような気がする。
加害者は お金もなく 地位もなく
誠実さもなく 感性もない。 
つまらない人だ。
気持ちが溢れてくるような経験をしたことが 
少なかったのかもしれない。

私は加害者を軽蔑しているけれど
(それは私が加害者よりも優れた人間という意味ではないけれど)
会って話をしたかった。
事故のこと 今までのこと これから何をしていけばよいのかを。
加害者と 私にとって。

彼と話が出来るのは、話をすべきなのは
私しかいないはずだった。
警察官や検察官や弁護士や裁判官にとっては
所詮他人事の交通事故。
加害者と 被害者側が 
一番話をする必要があると
ずっと思っていたのに、 
進むことができなかった。

できないままこの世から去った加害者。
彼がいないと知ったことで
今の私は心の安定があるけれど、
もっと早く、勇気を持つべきだったね。
加害者自身が気付くべきだとか、
何を言っても無駄だとか、
そんなことなど思わずに。





  1. 2008/11/11(火) 15:01:01|
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